BYDの軽EV「RACCO(ラッコ)」で、発売前から気になっていたのが上位グレードの320kmという航続距離です。軽EVで300kmを超えるだけでもかなり目を引きますが、カタログ値はあくまでWLTC。実際に走るとどこまで届くのか、そこが一番知りたいところでした。
発売から少し経ち、ようやく実走データが出てきました。数字を見る限り、ラッコの320kmは思っていた以上に現実的です。
横浜から愛知・幸田まで318.9km、残量は3%
自動車ジャーナリストの井元康一郎氏は、ラッコ300で横浜から鹿児島までのロードテストを実施。8月10日の投稿では、満充電の100%から走り始め、最初に充電したのは愛知県の幸田。走行距離は318.9kmで、バッテリー残量は3%だったと報告しています。
これにはちょっと驚きました。
ラッコ300系の一充電走行距離はWLTCモードで320kmです。もちろん走行条件が違うので、318.9kmという結果だけを見て「いつでも320km走れる」と考えるのは危険です。それでも、実際の道路を走った結果としてカタログ値にかなり近い距離が出たのは大きいと思います。
EVの航続距離は気温、速度、エアコン、道路の勾配、乗車人数などで普通に変わります。高速道路では電費も悪化しやすい。それを考えると、「軽EVで320km」はスペック表だけの数字ではなさそうです。
サクラ180km、N-ONE e:295kmと比べても長い
現在の軽EVを見ると、日産サクラと三菱eKクロスEVはWLTC 180km。ホンダN-ONE e:は295kmです。ラッコ300系の320kmは、それらを上回ります。
実際にEVを使う側からすると、この差は単純な25km、140kmという数字以上に感じます。
普段の買い物や送迎だけなら180kmでも十分なケースは多いです。ただ、行動範囲が少し広がったときや、充電せず翌日も使いたいときには、残量に余裕があるだけでかなり気が楽になります。軽EVを「近所専用」と割り切らず使いたい人には、320kmは分かりやすいメリットです。
発売2週間でラッコの受注は1000台を突破。初期受注では320km仕様が多く選ばれているとされています。装備差や価格差もあるので、航続距離だけが理由とは言えませんが、長い航続距離への需要があることは感じます。
サクラと比べると、バッテリー容量もかなり違う
現在の軽EVを見ると、日産サクラの一充電走行距離はWLTCモードで180kmです。対するラッコ300系は320km。数字だけを見ると、かなり大きな差があります。
ただし、ここはバッテリー容量も一緒に見ておきたいところです。
サクラが20kWhなのに対し、ラッコ300系は35.84kWh。ラッコはサクラの約1.8倍の容量を積んでいます。つまり、320kmという長い航続距離は、単純に電費がものすごく良いから実現しているわけではなく、大容量バッテリーの恩恵もかなり大きいです。
サクラは20kWhという比較的小さなバッテリーで180kmを走る設計。一方のラッコは、バッテリーを大きくして航続距離に余裕を持たせる方向です。
実際にEVを使う側からすると、どちらが正解という話ではありません。
日常の買い物や通勤が中心なら180kmでも十分なケースは多いですし、バッテリーが小さければ充電する電力量も少なく済みます。ただ、行動範囲が広かったり、毎日充電したくなかったりする人にとっては、320kmという余裕はかなり魅力的です。
軽EVでも「航続距離を優先するか、必要十分なバッテリー容量にするか」という選び方ができるようになってきた、と考える方がよさそうです。
ただし長距離では充電速度も見ておきたい
航続距離が長ければ、遠出にも使いやすくなります。ただ、そこで気になるのが急速充電です。
ラッコ300系の急速充電は最大約50kW。300km前後を一気に走れるとしても、その先で何度も急速充電を繰り返すような使い方では、充電時間が移動時間に効いてきます。
つまりラッコの強みは、「軽EVなのに長距離旅行が得意」というより、「普段は充電回数を減らしやすく、必要なら300km近い移動も視野に入る」と考える方がしっくりきます。
320kmが現実的だと分かった意味は大きい
ラッコが発表されたときは、軽EVで320kmという数字そのものに驚きがありました。発売後の今は、その数字が実際の走行でも大きく崩れていないことの方が重要です。
EVはカタログ航続距離だけで評価できません。充電速度や充電環境、使い方まで含めて考える必要があります。それでも、航続距離への不安が軽EVを選びにくくしていた人にとって、ラッコ300系はかなり現実的な選択肢になったと思います。
「軽EVは街乗りだけ」というイメージを、少し変える1台になりそうです。


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